やを、竹内は低能児と云う。
お澄、の言葉によってそれが知れる。
[#ここで字下げ終わり]
五月二十二日
Mutter のことをいろいろ思い、この頃一つ違った観察をした。
老年になろうとする前に、まだ若さがのこって居て、その不調和と、生活に対する執着から苦痛が生じ気分もむらになる。若い女に対して嫉妬深い。普通の女、五十になれば老衰し切るがまだ若いところが多いだけ苦しいのだ。その若さがもがく、然し目的ない――生活の――。故に苦し。若くない、老人でない、その苦痛、同情すべし。
六月或日
Y机の前で旅券下附願につける保証書の印を加茂へもらいに送るその用の手紙書きつつ
「ねえべこちゃん、これ切手はらないでいいんだろうか――印紙を」
「ハハハハもやでもそういう感違いするのね ハハハハ愉快愉快」
「いらないのか?」
「いらないのよ 収入[#「収入」に傍点]印紙ていう位だもの」
――これで一つ思いついた
持参金をうんと貰った男に
「君の婚姻届には収入印紙がいるね」
花袋《はなぶくろ》
まあ、一寸小説もよむ
田山|花袋《はなぶくろ》の口やね
前へ
次へ
全25ページ中16ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング