まぜ、赤絵壺にさして飾る。
床壁、緑っぽき黒の砂壁、その前に花の色、実に落付いて美しき調和。
絵――油、にかきたい心持がした。
恐ろしい風の吹く深夜
月皎々
黒龍のような雲
白い花
硫黄山
五月 那須
○いし子
○きみ子 色気あり
Y「さあこれから行って寝よう」
キ「眠らせませんよ」
きみ子 びわ師がいい人、
○みどり
米問屋の女房、その手下の男との話
「さよう、さよう」
「いくら私共が御迷惑をかけまいと思って居たって、親銀行が困って居るんですから」
「全くですな」
「地震の年ですかな、その次の年でしたかな、鈴木商店が潰れて随分苦しみましたぜ」
「いや、やっぱり車輛課長」
「随分然し家へなんか居催促でしたよ、執達吏が来るかと思って心配しましたよ」
夢
六月九日
原稿のつぎばりをしようとして小さい鋏をつかう拍子に
「おや、これは先がつぶれて居ない」
奇妙に思い、この鋏の先がつぶれたのは夢の中のことだったと思い出した。つづいて昨夜のもう一つの夢思い出した。それは柔かい緑色の若葉の梢の中からいくつも、いくつも黒蝶のように雛鳥の黒いのがかえって舞いたつ。驚いて見て居るとだれかが 何とか鳥です と云った、その名 一寸美しかったのだが、覚えず。
Yの同じ夜の夢
Y、ベコがピアノを弾いて居る、手つきがよい、ピアノを一つ中古で買おうという、オルガンのような見かけの貧弱なの
「アグファ」という名
「へえ、フィルムと同じ名だな、
然しベビーピアノでは小さくて大きなものひけず、やすくても(五十円)だめだなと思う
上野から
○白河在の爺
大学生と向い合っていろいろ喋る。
「あなたが行ってなさる学校にもはあ 支那の留学生来てますかい」
「あげえ、支那さわいでるが 金なじょにしてるだべ」
「政党争いみたいなもんだっぺ」
[#ここから1字下げ]
〔欄外に〕だんだん尻上りな口調
[#ここで字下げ終わり]
「民衆の仕合わせを目標にはしてるらしいない」
「目覚《メザメ》て来たんだない」
それに対する学生のデスポンデント
上野――黒磯
氏家から女学生のった。
紺サージの制服、緑に白線の入ったバンド
安積的口調 十二日に旅行アルラシ
東京日比谷、東京駅、横須賀、
前へ
次へ
全13ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング