と歩いて行く。エイチャイピーラの唄=事務所の茶=クベルパルトコンフェレンスのトリビューンにもさじのついた茶のコップの写真が出た。
[#ここで字下げ終わり]
 健康な村のニキートや技師マイコフがする通り、患者達も朝は自分の茶を急須につまんで、病院からくれる湯をついで、それがすきなら受皿にあけてゆっくりのむ。
 正午十二時に食事が配られ、四時すぎ夕食が配られ、夜は又茶だ。
 夕方の六時、シェードのないスタンドの光を直かにてりかえす天井を眺めつつ口をあいて私はYにスープをやしなって貰って居る。
 わきの寝台に腰をかけ、前へ引きよせた椅子の上に新聞をひろげ、バター、キューリ、ゆで卵子二つ、茶でファイエルマンが夕飯をたべる。彼女は昼の残りの肉を ナイフでたたき乍ら
――この肉上げましょうか、食べたくなる程美味しい肉ですよ 全くさ
 それでも三週間キャベジの煮たのだけたべてやっと百グラムの牛肉が食べられるようになったのだから、彼女はその肉も結局は食べ終る。
 歩き乍ら 青いすっぱい林檎を皮ごとたべる。糸抜細工《ドロンワーク》を始めた。
 Yが
――このスタンドはいいがどうしてかさがないんでしょうね
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