は中学をずっと一番で卒業した。大学でもよい方だった。あれだけ決心して身を捧げるからには、あの仕事の中に必ず何か真実がなければならぬと思うのです。その真実はどんなものか私はそれを知って自分の息子のやることを理解したいと思う。こんどロシアへいらしったら、どうぞ彼方の様子もよく視ていらして下さい。いろいろ御話を承りたい。」
――実に親の心ではありませんか。そこで私が訊いて見た。「貴方はこれまで息子さんをどう教育していらっしゃったのですか」
××さんが云われるには
「――私はただ嘘をつくなとだけ云って育てて来ました」
私は答えたが
「貴方のその願いは完全に果されたと云うものです」
今の世で嘘をつかぬということはこれ丈のことを意味するのだと感じました。
この話は自分を感動させた。聞いて居る間に涙が出たが 後でYに話してきかそうとし、自分は終りまで一気に喋ることが出来なかった。
二十五日
十日ばかり経つがこの話から承けた感銘が消えぬ。心が心を撲つ力は「尤な理論」にだけはない。それを生きる、生きかた真情の総計中に在る。
――○――
○日
m来。クリスマスの日に
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