への展望とともに自身の文化建設の課題として文学をとりあげはじめた人々には、三つを順ぐりよんでいっても一括してまとまった判断をうけとりにくく、文学の美しさで鼓舞されるという感動もうけられなかったろうと思います。小田切さん、佐々木さんなどの論文は、御本人たちとして、自分の云いたいことを云いたいように云っていらっしゃる。云いたいことを云いたいところからめいめい云う、つまり、主題の歴史的な究明や展開なしに読者の理解を眼目におかずそれを書く自分の熱意にだけしたがって書いてゆく、それが民主主義的な文学運動であるかのようです。ところが、民主主義文学運動というのは、云いたいことを云いたいところから云いたいように云うというような素朴なものではないんです。民主主義文学の諸問題、諸探求、それは、書く人のさまざまの個性的ニュアンスで変化をもち多様化しつつ、けっして単なる主観的発言ではなく、民主主義文学というものがこの歴史の中でもっている客観的な本質に即して必然とされる客観的な諸特質が研究され、綜合され、私たちにとって共通な文学の成果としてもたらされてこなくてはならないものです。
 第四号に作家論を書いている三
前へ 次へ
全57ページ中44ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング