の間にあって、『新日本文学』はこの一年に、どういう文学的創造能力を発揮してきたでしょう。
 新日本文学会としての組織活動の成果については、べつに窪川鶴次郎さんの報告があると思いますから、それはそちらに願うことにして、私の報告は『新日本文学』の創造的な面にかぎりたいと思います。
 新日本文学会ができたのは、御承知のとおり一九四六年一月で、三月から『新日本文学』が出はじめました。けれども、雑誌の発行はなかなかむずかしくて、九十五ページぐらいのものが、今日までにたった四冊しか出ていません。私どもの文学は楽な仕事をしていないんです。つまり紙の問題です。民主的文学の流れは、これまでいつだって金儲けをしたことはなかったから、今だって闇の紙を、原木と交換で買うというようなことはできません。いかがわしい出版社が、まったくインフレーションにともなう現象としてどんどんできて、妙な雑誌がやたらにできて、それらがみんな紙を買い煽る。ですから、日本の民主主義文学のために意義をもつ『新日本文学』は編集責任者たちにたいへんな努力と心痛とをさせなければならないありさまです。闇紙が日本の民主的文化の重要な新芽をくってい
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