るといえると思います。民主的出版の確立のために、用紙の適正な配給を監視するという仕事は、反動文化との闘いの最も根本的な必要だと思います。
『新日本文学』の発行が用紙問題で定期的にゆかないということは、新日本文学会全体の活動に、重大なマイナスとなっていることは、皆さま、御覧になるとおりです。たとえば、徳永直さんの「妻よ眠れ」という小説は、『新日本文学』創刊号からのせられはじめまして、本年前半期において、一般から注目される価値を示した作品でした。徳永さんの御都合で中絶した面もあるでしょうが、ともかくそれは中断されたままになりましたし、だいたい、評論にしろ、どうしても、どっしりと百枚二百枚というものをのせきることができません。薄い一冊の雑誌に、そうとう変化も与え、文学の各方面の話題にもふれようと苦心されているために、比較的あれやこれやを、少しずつという工合になります。これは営利雑誌ならともかく、どんなに幅がひろかろうともともかく一貫して民主主義文学の主流をなしてゆこうとする運動の機関誌としては、じつに感銘力をそがれます。紙面がないから、新日本文学会に集っていられるあらゆる文学者たちの、あらゆ
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