響からとき放し、日本の歴史の成長をとげてゆくかということの課題があります。梅崎春生氏には、既成文学的達者さをどういう風にして洗い落してゆくかの課題があり、中村真一郎氏には文学の厳粛性をどう理解してゆくかの課題があります。全体としてインテリゲンチャ新進作家にとっての本年の課題は、日本の歴史の矛盾だらけのひだのすきから生じた個性主義を、どのようによりひろいより歴史的な発展の道におくかという課題があると思います。これらの作家の共通な「近代」の足かせを、今年もこの人々は好んで自分の足首につけておくのでしょうか。
前年にある程度の成果をもって活動した広範囲の民主的作家の活動は、本年になればそれぞれに辿って来たテーマを発展させ、よりひろい社会的な文学に進むだろうと思います。民主主義文学というものは、進歩的な小市民層の生活と文学とを包括するものですから、勤労者の文学をもっとも注意ぶかく鼓舞しなければならないと同時に、一見なんの奇もないような店をいとなんでいる人の生活、勤人の生活、会社員、主婦などの生活の声が文学に反映してきてよいと思います。
本年度は、農民の生活をうつす多様な文学と、児童のための
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