れるものとなるでしょう。そして民主主義文学の中核をなすべき勤労階級の文学は、だんだんその流れの幅をひろげるでしょう。日本に新しい生活と新しい文学を求めるすべての人々は、はげしい期待をもってこの流れに注目しています。
おなじように、前年度から活動をあらわしたインテリゲンチャの新進作家たちの、本年度の仕事は非常に期待されると同時に、個々別々にそれぞれの作家として発展させなければならないさまざまの矛盾や希望的なモメントを前年度において示しています。
たとえば野間宏氏は「暗い絵」を完結して「肉体は濡れて」「顔の中の赤い月」「華やかな彩り」とうつってきましたが主題の小ささにくらべて長い小説にまとめてゆく文学上の危険な現象を、本年はどのように緊密な方向へ発展させるか、また右と左の足がそれぞれに別な土台に立ってしかもその間に「統一をもとめている同時的把握」の課題がこの作家によってどう解決されるかの問題があります。これは野間宏氏という一人の作家の肉体と精神とをたて裂きにするかどうかという問題です。
また椎名麟三氏には、自分の社会的人間的経験の文学的表現を、どういうふうにしてドストイェフスキーの影
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