一九四七・八年の文壇
――文学における昨年と今年――
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)いせい[#「いせい」に傍点]のいい論文で、
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 一九四七年の文学の動向として大へん目立つことは大体三つあると思います。
 その一つは、一九四六年中は戦争に対する協力者としての活動の経験から執筆をひかえていたどっさりの作家が、公然と活動をはじめたことです。これは日本の政府が自分自身の組織の中に、あいまいな条件におかれている多くの政治家をもっているために、戦争の責任者の究明をごく申訳け的に行っている事情に呼応するものです。
 雑誌編集者も作家自身も、戦争協力に対する責任の追求が、政府のがわからはきわめて緩慢で申訳け的であり、人民の民主的自覚がおくらされているために、民主的文化の陣営からの追求も居直ってしまうことが可能であるということを発見した結果です。『文学界』の人々は、もっとも戦争中戦争遂行に協力した人々の一群であるし、このごろさかんに執筆している石川達三氏は戦時中の協力に対して、日本がふたたびあやまちを犯せば自
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