……拵えさせるようなことをする人達!
 かなり激しい激動《ショック》を感じたすぐ後の私の心は、この二重の厭わしさに、殆ど目が眩むような醜陋《しゅうろう》を感じずにはいられなかったのである。彼等と自分達と相方に対する道徳的羞恥ともいうべきものが、ぐんぐんと私の胸に込み上げて来る。晴やかな朝の日光を吸って、ホヤホヤと毛《け》ばだった荒削の板の、無表情な図々しさ。非常な淋しさと不思議な憤りに私は凝《じ》っとしていられないような気分になってしまったのである。
「そんなものをなぜ拵えなければならないの、私はほんとに厭だ、ほんとに――。どうしても拵えなければ駄目なの?」
 下を向き続けて赤味の上った顔を擡げながら彼は板を持って卓子の前に来た。
「若し誰が上っても拘《かま》わないなら拵えないで好いのですよ。けれども若しそれが厭ならどうにかしなければ仕方がないでしょう」
「それはそう。だけれども厭だとはお思いなさらない? もうさっきああやって、私共が気が付いたことが分ったんだから、もう気が引けて止めはしないか知ら」
「そんな敏感なら始めからやりますまい。どんな人間だって心を持っている者は、こんなことを
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