となって、死のうとする者、死なれようとする者に対しての愛情が湧然《ゆうぜん》と胸に充ち渡るのを感じたとき、自分は死の肯定によって一層強められた生の光栄のために、魂が燃え上るのを感じた。
四
十六、十七の両日の間に、すべての状態は漸次《ぜんじ》死に近づいて来たらしい。
熱の下降と脈搏の著しい増加を来して、十七日の夕刻には発病後始めて、百の脈搏と七度七分の温度とが記入された。そして、すべての精神作用は、全く休止してしまったのである。彼の骨だらけな手を撫でながら、ポロポロ涙をこぼしている母の悲痛な顔を見、涙を拭き拭き気をとりなおそうとするらしく頭を振る父の「いい顔」を見ると、私はほんとうに何とも云われない心持がした。
親達の生きている間は、死ねないと思わずにはいられなかった。
もうかなりの年になっている両親にとって、十五年の間限りない心遣いと、限りない望をかけて育てて来た息子を今失うことは、全くどのくらいの打撃であろう。泣き伏している母も、「大きな男だがなあ」と歎息する父をも、そおっと自分の胸に抱き擁《かか》えて、泣きたいだけ泣かせてあげながら、自分も眠くなるほど
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