。
「はい。はいはい」
扉をしめながら、彼女は更に一つをつけ加えた。
「はい。――」
彼は天井を見ながら我知らず苦笑を洩した。が、その笑が消え切らないうちに、彼の胸には、妙な鬱憤がくすぶって来た。
彼は眉を顰めながら、敷布の間で体の位置をかえた。枕の工合をなおした。
彼にはれんがちゃんと断って来た報告をしないのが気に触った。其上いつもなら枕元に椅子を引きよせて、五月蠅いほど何か喋ったり笑ったりする彼女―― Chatterbox が、自分の部屋に引こんだきりことりともさせないのは穏やかでない。
部屋はがらんと広く、明るく無人島のような感じを与えた。彼は暫く、両方の瞳を隅の方に凝して厚い壁で仕切られた隣室の様子に注意した。こっそり立ってクリーム色の壁のむこうを覗いて見たい気が頻りにした。――医者は動くことを禁じている。――
彼は、指先に力を入れてジーッとベルを押した。
跫音がして扉が裏側にれんをはりつけて開いた、彼女は、今度も把手に左手をかけたまま、首だけさし延して主人の方を見た。
彼女の顔は期待で緊張していた。何か一言云われたら、時を移さず「はい」と云う返事もろ共その膝を
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