は末の日の望があろうが私は、ただ無駄になやむばかりじゃ――。――ただ無駄に――
第二の精霊 オヤ、若い御仁は何と云いなされた?――同じ事でなやむのじゃとナ? とがめはせぬワ、無理だとも思わぬワ、じゃが、マ、ただながめるだけの事で御あきらめなされと云わねばならん様な様子をあの精女はして居るじゃ。
第三の精霊 ――
第一の精霊 だれでも一度はうけるあまったるい苦しみじゃナ。そのあったかい涙をこぼして居られる中が花じゃと、私達の様になっては思われるワ。私達が若かった時――お事位の時には幸いあの精女の様な美くしい女は居なんだからその悲しみもうすいかなしみであったのじゃ。お事の若い心にはあの精女はあまり美くしすぎたの…………
第二の精霊 ほんにその通りじゃ。美くしすぎたのじゃ世の中すべての男に――
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第三の精霊はうなだれてあっちこっちと歩き廻って居る。まわりには何となく重い気分がにじんで居る。
若い男は自分の老いた時の事を、老いた人達は自分の若かったことを思って居る。
三人ともだまったまんま木の間を行ったり来たりするうちに一番川に近い方に居る第二の精霊がとっぴょうしもない調
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