ッと首をあげて一つとこを見つめながら二人の話をきく目の中には悲しみと怒りがもえて居る。うつむきにねころんで居たのを右の手を台にして横になる、耳をすまして首が一寸かたむいて居る。
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第一の精霊 だが及ばぬ事じゃ、いかな物ずきでもしわくちゃなはげおやじに……ウフフフフフおかしい様な気もするワ、いい年をして子の様な精女の姿にうなされるとは――はかりきれない美くしさをもって居ると見える。
第二の精霊 若さと美くしさの盛の年をして居るペーン殿のこの頃の眼の光りをお主は気づいてござるか? わしのすばしこい眼の奴は、ちゃんと見ぬいてしもうたワ、恋のやっこになってござるとナ。云うまでもなくシリンクスの肌のしなやかさをしとうてじゃ。
第一の精霊 アポロー殿がとび切りの上機嫌の今日でさえ嬉しがりもせず笑いもせなんだものと云う謎はとけたワ。ペーン殿は、年がまだ若いワ、髪が房々としなやかで頬は豊かで――うらやましい事じゃ、今はなやんでござっても末の日の望はあるワ。
第三の精霊(ひくくうなされてうなる様に)私も同じ事でなやむのじゃ。ペーン殿に
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