たんでございます。
ペーン お前が? お前が? 私が三度あんなに心をこめた文をやったのに何とも云わない人が? そうしたらどうおしだ?
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ペーンはねたましげなイライラしたしまったかおをして手をふってせきたてる。
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精女 そうはいたしましたけど――私は何も申しませんでした。そしたら若い人は私に死ねと云え、死ねと云えと申しましたから私は云ってしまいました。
若い人は川の方にとんで行ってしまって二人の老人もそのあとを追って行ってしまいました。私は何の事だかわかりませんで――ただ、一人ぼっちになったんで悲しゅうございました。
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いかにも小供らしい口調で伏目になりながら云う。
ペーンはシリンクスの話のあんまり子供らしいのと泣きぬれてました美くしさにみせられて頬をうす赤くしながらそのムッチリした肩を見ながら、
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ペーン ほんとうにマア、お前は美くしい体と心をもって居る事、私に御前の手の先だけさわらして御呉れ、その象牙
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