で歩いて精女のわきによる。やさしげな又おだやかなものしずかな調子で、
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ペーン お前は泣いて居るネ、そして又大層美くしい。
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精女はおどろいてかおから手をはなし身をしりぞける。
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ペーン 何にもそんなにおどろくことはない。私はお前をどうしようと云うのではないから、どうして泣いて居る?
精女(沈黙。壺のふちを小指でなでながら耳をまっかにして居る)
ペーン 何故だまって居る? そんなに沈んだ泣いた眼をして居ると御前の美くしさは早く老いてしまうから――誰かが御身をつらくしたなら私は自分はどうされても仇をうってあげるだけの勇気を持って居るのだよ。
精女 誰にもどうもされたのではございませんけれ共――今ここに参りましたら老人と若人と三人の精霊が居りましてその若い人は私の前に体をなげ出しましたんでございます。そしたら年とった人達が髪の毛の上に手を置いて御あげ額に一度だけキッスして御上げって申しましたから私はその通りに髪の上に手をのせてあげ
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