酷さだ。婦人労働者の賃銀は、一九二七年、工場労働者総数平均賃銀が、男二円十五銭に対して女はタッタ八十七銭だった。差は一円二十八銭という額にのぼっている。経済恐慌によってこのヤスイ賃銀もズルズル低下し、昨年頃は婦人工場労働者の平均賃銀は八十四銭まで落ちた。弁当もちで、交通費をもって、この有様だ。企業者は、この話にならない賃銀さえスラリとは渡さない。どの工場でも何よりみんなのいやがる罰金制、歩増制度、強制貯金などが行われているのは、誰でも知っている。日本では婦人労働者がその八割六分を占めている繊維工業者らは、実物供与、寄宿舎、光熱、被服、賄等を会社の手に独占して更にそこから儲けている。而も一九二五年、六百二十軒の工場で、宿舎に雨戸のあるのが[#「雨戸のあるのが」に傍点]二百四十九軒。雨戸のないのが[#「雨戸のないのが」に傍点]三百七十一軒という有様だ。そういうひどい条件で働いている十四から二十四五の婦人労働者は、どの位の文化程度をもっているものだろうか。不就学、さもなければ小学中途退学が一番多い。
 その低い文化水準を高めるために、経営者たちは工場の寄宿舎につめられている労働婦人にどんなも
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