れから後、キエフ市へ行った。彼女はウクライナ共和国の国立出版所で、ロシア部の担当だった。国立出版所の机の前で働くかと思うと、「土曜労働《スボートニク》」でジャガ薯掘りをやりながら、フォルシュは四度キエフ市の政権が代るのを見た。反革命の白軍が南方ロシアの旧い美しい都市であるキエフを占領する。赤軍が逆襲して、市ソヴェトに赤旗が翻ったかと思うと、チェッコの侵入軍が、派手な制服の士官に引率されて襲撃して来る。
 赤旗をかくせ!
 党の政治部は書類を焼きすてて地下へもぐった。工場の門前にバリケードが築かれる。やって来るならやって来い! ボルシェビキの闘争力を見せてやるぞ! キエフ市はソヴェト第一の大炭坑区ドンバス地方に近い。しつこく「白」が最後に潰滅する迄つきまとった。
 フォルシュはそのはげしい革命の波にうたれながら、「ラビ」「居住者」など、彼女の代表作となったものを書いた。
 シャギニャーンの『文学日記』『自分の運命』『ソヴェト・アルメニア』等が出版される。
 党員となったアンナ・カラヴァーエ※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]の生活はガラリとかわった。彼女が中央執行委員会の質問応答掛
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