心をもたれる一人の若い婦人評論家が現れた。
 それは、さきにふれたラリーサ・レイスネルだ。『プラウダ』紙に「戦線」という文章があらわれ、非常な注目をひいた。小説ではない。一九一八年から二〇年にかけてのヴォルガ・カスピ海地方における赤軍の活動、ソヴェト権力確立までの実録だ。が、その事実の歴史的、政治的把握の確かさ、文章の活々した情熱、恐ろしい困難、闘争、建設を貫き彼女が身をもって経験した数々のエピソードの感銘ふかさは読者をつよく動かした。写真を見たものは、みんなはレイスネルの優美さにおどろき、この優美な一人の女性が階級婦人闘士として、不撓に努力した活動ぶりに尊敬を深めた。
 ラリーサ・レイスネルは、大学教授レイスネルの娘として一八九五年に生れた。早くからドイツやフランスに住み、カール・リープクネヒトなどと親交のあった大学教授レイスネルの家庭には、革命に対する真面目な関心があって、「十月」の頃ラリーサはまだ二十三歳だった。が、小さい時から革命的影響をうけていた彼女は「十月」と同時に、党員となった。チェッコスロヴァキア戦線へ派遣された。
 また、ヴォルガ・カスピ海地方のあらゆる革命戦線に働き
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