はなれた結果の錯乱として、世界的な例を示している。
ヨーロッパ諸国からロシア風の情熱とよばれたロシアの十九世紀から二十世紀のはじめに、ロシアのインテリゲンツィア婦人の一部は決して眠ってはいなかった。急進的な教養のある若い婦人達の人民解放運動への参加は目醒しかった。革命家としてのヴェラ・フィグネル、数学者としてのソーニア・コ※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]レフスカヤ、十二月党《デカブリスト》の妻たちは世界にしられている。
ツルゲーニェフは、彼の「その前夜」「処女地」などで不十分であるがこの時代の進歩的ロシア女性の或る姿をかいている。ゴーリキイに婦人オルグをあつかった好短篇がある。
こうして、社会変革のための活動に少からぬ婦人が活動したけれども文学的創作の分野にはとりあげるほどの足跡をのこしていない。
その理由は明らかだ。この時代、ロシアの教育ある婦人たちは、主として貴族、大資本家、学者、などのインテリゲンツィアの間に生れているばかりだった。彼女等はフランス語を母国語のように喋った。ドイツ語で夢を見、ドイツ語で哲学、文学の本をよんだ。音楽、ダンス、手芸。立派な家庭教師を雇
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