界文学に、社会と文学との生きている関係を理解させた。
ロシアの豊富で雄大な自然と、そこに営まれている社会の暗い恐るべく暴虐なツァーの封建的絶対制、その上に急に花咲き出した資本主義搾取の二重のおもしの下にあって苦しみ、人生を浪費する人民の悲劇を見つづけるロシアの作家たちは、植民地成金になった十九世紀から二十世紀初頭のイギリスの暮しのらくな中流人的文学とは、まったく種類の違う芸術作品をわれわれにのこしている。
ツァーのロシア社会の暗くむごたらしい封建的な絶対制はそれを批判し、社会を発展させようとするインテリゲンツィアを流刑にさらし、監視の下におき作品発表の自由を奪った。チェルヌイシェフスキー、プーシュキン、レルモントフ、ゴーリキイみんなそういう目を見ている。ドストイェフスキーは死刑の二分前で殺されなかった。
ロシアの正直な文学者はその精神行動においてロシアの革命史からまずはなされない関係をもっている。従って作品の主題は人道主義的正義観、人間解放への熱望などで特色づけられているのだ。ドストイェフスキーの作品の悲劇的な分裂の世界は、ロシアの苦悩が正当なはけぐちとしての人民の革命的方向から
前へ
次へ
全39ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング