工場クラブの文盲撲滅学校でやっと二年前に字を書くことを覚えた四十五歳の織物女工が、代表に選ばれてピオニェールの野営見学に出かけ、その報告を工場新聞に書くほど、飛躍的に一般婦人勤労者の文化水準は高まったのだ。が、過去の枷あとは、そう急に消えない。革命後九年目の一九二六年にとられた統計で見ると、ソヴェト同盟の女の文盲率はまだ男より高い。

[#ここから横組みの表]
 都会における読書きの出来る男女の比率
   ┌─────┬──┬──┐
   │  年齢  │ 男 │ 女 │
   ├─────┼──┼──┤
   │10……14歳│86.0│83.5│
   │15……19歳│88.5│83.3│
   │20……24歳│92.2│81.4│
   │35……39歳│86.9│63.1│
   │55……59歳│71.5│39.7│
   │70……74歳│52.9│24.7│
   └─────┴──┴──┘

 農村において読書きの出来る男女の比率
   ┌─────┬──┬──┐
   │  年齢  │ 男 │ 女 │
   ├─────┼──┼──┤
   │10……14歳│65.2│43.3│
   │15……19歳│69.0│45.9│
   │20……24歳│76.9│45.4│
   │35……39歳│65.6│22.8│
   │55……59歳│40.6│ 7.5│
   │70……74歳│24.1│ 3.6│
   └─────┴──┴──┘
[#ここで横組みの表終わり]
 こういう工合だった。
 工場委員会、市、町、村、地区のソヴェト役員として女の生産、政治における大衆的進展は実にすばらしいテンポで増大した。が、この名誉ある「十月」は、世界のプロレタリア文学の婦人作家として誰々を送り出しているだろうか?
 ロシア文学は十九世紀から世界文学の中でも特に独特な高い位置をもって来た。ロシア文学には、ほかのどの国の文学よりも人生と人間生活との問題に直接ふれた作品が多くロシアの近代文学はつよい一本のヒューマニズムにつらぬかれている。プーシュキン、ゴーゴリ、レルモントフ等をはじめ、トルストイ、チェホフ、ゴーリキイなどをのぞいたら、世界の文学は云わば背骨の大切な部分をひきぬかれたようなものだ。チェルヌイシェフスキー、ベリンスキーその他の人々の文芸評論は、世
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