もちこむ異国趣味は、直に民族主義の武器としてつかわれるものだ。なぜなら、支配権力がヤイヤイいう民族主義の目的は、結局において日本人は日本人! 中国人は中国人だ! と、一つの条件的事実だけをさも決定的なものらしく全面にひろげて強調し、各民族間のプロレタリア・農民としての世界的連帯を切ろうとするところにある。中国は中国、日本は日本、をファッショの立場から主張する文化的下地を最もよくつくるのは、国際的主題によるらしく見えるブルジョア民族主義文学だ。
ブルジョア勃興期に、ブルジョア文学の異国趣味は植民地発見熱の反映として現れた。没落期に入ると一緒に、それは享楽的なブルジョア文化の消費者の猟奇癖をたんのうさせるために役立ち、急テンポに侵略的帝国主義のデクになり下りつつあるのだ。
群司次郎正という大衆作家がある。彼はよみ物提供の種をさがしに、異国情調、国際的背景を求めてハルビンへ出かけていた。すると、奉天のパチパチが起って、あの辺一帯が大騒ぎになった。(追記・日本軍部による張作霖の爆死事件につづく侵略)
異国情調を求めて来ていた群司次郎正は一躍、「ハルビン脱出記」の筆者となった。文中何という
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