こういう彼が現代において「秩序ある社会を希望する人々」としてカトリーヌをあげている。
 そういう社会をのぞみ、信義をもち得る社会を求める心からバルザックは反対党――共和党に対して王党となったのか。
 ユーゴー(一八〇二―一八八五)は共和党であった。(一八四六年頃)そしてナポレオン三世の帝政布告に抗し二十年間亡命、一八七〇年普仏戦争による帝政崩壊後かえる。「レ・ミゼラブル」は亡命中。
 バルザックとユーゴーとの大きい差は、ユーゴーは二つの対立物から更に一つを生み出す能力をもっていたが(ゴーヴァン)、バルザックは、二者のうち、そのいずれかといつも対立においてものを見た。そのために彼はその洞察の強烈さにかかわらず、いつもリアクショナルな立場[#「立場」に傍点]にいることになっている。衷心の希望は人間的であるのにかかわらず。

        「現代史の裏面」

 ベルナール氏、ヴァンダ、オーギュスト。バルザックはここでディケンズの真似をしている。不器用にしている。
 ベルナール氏の娘への溺愛について、かくされた貧困について。

 当時のイギリス文学がバルザックに与えた影響。
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