「注意! 同志たちよ、機械の力を理解して!」電気トロに油断すると、やっぱり命を失うぞ。不具になるぞと絵で示してある。安全燈をうけとる間に、毎日のことながら新しい注意をよび起すようにしてあるのだ。
「注意! アルコールはわれわれの敵だ!」酔って坑内へ下りようとし、エレベーターに挾まれて死ぬな。なかなか真に迫った絵が描かれている。
「注意! 骨を惜しむな!」小さい支柱の故障だと云って放って置くな。落盤はいつ起って君らを圧死さすかもしれぬ。
 ソヴェト同盟の炭坑では労働者がどんなに作業の危険を防ごうと互に注意しあっているかがありありと感じられた。このポスターを見ただけでも、会社が搾るために労働者をシキに追い込む炭坑と、労働者が自分らのために働いている炭坑との根本的な相違が現れている。(こういうみなのためになるポスターなどはソヴェトのプロレタリア美術家同盟の画家たちが描いているのだ)
 同じような注意は地下数百米の坑内にも及んでいる。見張所は応急救援所をかねている。
 二時間ばかり泥水と炭塵にまびれて上って来ると、ドミトロフ君は私を風呂へ案内した。よそから来たものだけを入れる体裁の風呂ではない
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