まだ建っていないがゴルロフカ炭坑に働いている専門技術家が教師となり、半年、一年、二年とそれぞれ程度の違う技術教育を行い、プロレタリアの幹部、指導者を養成しているのだ。
 ここで朝鮮、台湾の読者諸君に特別に知らせたいことがある。それは、ゴルロフカの「労働宮」にはロシア語の工場新聞のほかにもう二つ別にユダヤ語とタタール語の小新聞発行所が設けられていることだ。十月革命によってプロレタリア農民が勝利するまで、ブルジョア地主の専制支配の下でユダヤ民族と弱小民族の一つであるタタール民族が虐げられて来たことは、ロシア歴史を一目見ただけで明らかである。ユダヤ人は屡々虐殺された。タタール人抑圧の悲憤にみちた物語は、文豪のトルストイも小説に書いている。帝政時代のロシア支配階級はその他多くの弱小民族を圧迫し生活権を奪うことによって豊沃な耕地を、森林を、鉱山と港とを自分の富として加えた。タタール民族ユダヤ民族は、自分らの言葉で書いたり読んだりすることさえ禁じられていた。小学校は強制的にロシア語で教えた。公文書は必ずロシア語でなければ通用せず、芝居も自分らの言葉でやることは許されなかった。誰にでもわかる自分らの
前へ 次へ
全18ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング