てでも、新聞からの切抜きを利用してでも、ごく自由に大判画用紙一枚ぐらいにまとめて、そのままピンで職場の壁にはりつけ、皆で読む。
 ゴルロフカは炭坑だから、地べたの下何百メートルのところまで職場新聞はもち込めない。ここではゴルロフカ全体の新聞が出されているわけなのだ。ドミトロフ君が説明して『プラウダ』の論文を書き直している若者が「われわれの新聞の編輯責任者の一人ですよ」。
と云った。青年労働者はその声で鉛筆をもったまま顔を上げ、丈夫そうな美しい歯なみを見せて笑った。「そして『共産青年同盟プラウダ』の通信員です」
 私はきいた。
「坑内で働いているんですか?」
 ソヴェト同盟では十八歳以下の青年労働者は一日六時間以下、十六歳以下は四時間以下しか労働を許さない。それで八時間労働に同じだけの賃銀をとり、しかもその半分だけの時間は勉強のためにつかわれるのだ。コーリャというその青年労働者は、
「働いています」
と答えた。
「だが坑内で働くのはたった三時間か四時間です、僕は今専門学校の講義《クラス》に出ているので、坑内はそれだけなんです」
 ほほう、ここには専門学校まであるのか! 訊いて見たら学校は
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