きながら、向い合いの室では「新聞」編輯だ。一人がルバーシカの襟をひらいて一生懸命モスクワ発行の『プラウダ』から何か論説をやさしく大衆向きに書き直している。鋏で切抜きをやっている若者がある。漫画の切抜きを集めたのを調べているのもある。
 諸君はこれまでもソヴェト同盟の労働者、農民、勤人、赤軍兵士すべてが、自分たちの工場、農場または職場の新聞を発行しているという話をきいたことがあるだろう。工場新聞は大抵印刷で大版四頁、六頁という本式のものだ。工場新聞では『プラウダ』をはじめ、労働組合の機関新聞などがソヴェト同盟全体の建設問題としてとりあつかう政治、経済、文化すべての問題を、自分らの工場ではそれがどんな風に扱われているか、実際の状態はどうか、どんな労働者大衆のイニシアチーブがあるかという点などを書く。自己批判もある。大衆的投書もある。文学サークルの連中の詩や小説ものる。
 職場の新聞は、印刷の工場新聞をもっている工場でも各職場職場が手書きの壁新聞の型で発行している。五時間毎にかわる。これは、ほんとに職場の新聞で、職場の日常的なあらゆる感想、自己批判を、洒落ででも、滑稽な色紙の切抜きをはりつけ
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