信仰に、幸福を与えるような虚言を説教したのである。p.277
◎彼は宗教の問題を一種の神性の狂信を与えている国家の問題に移す。そして、彼の生涯の最も真摯な告白の中で「君は宗教を信じているか」という問に対し 極めて実直な奴隷のように「僕はロシアを信じている」と答えるのである。
 なぜなら ロシア、それは彼の避難所であり、彼の救済だからである。ここに来て彼の言葉はもはや分裂ではなくて 信条《ドグマ》になる。神は彼に対して沈黙してしまった。だから 彼は自己と良心そのものとの仲介者として一人のキリスト、新しい人間の新しい告示者、ロシアのキリストを創造したのである。p.278
○彼のこの救世主の文書は――暗黒の印象を与える。p.279
 笞のようにビザンティンの十字架を手にした極悪な狂信的な中世紀の僧侶、恰もそんな風に彼は政治家、宗教的狂信者としてわれわれに向って来るのである。p.279
○口角泡をとばし、手をふるわせて彼はわれわれの世界に悪魔祓いをするのである。p.279
○ひとりロシアだけが正しく――反ヨーロッパ的、アジア的 蒙古的 ダッタン的であればあるほど、それだけ正しいのである。保守的
前へ 次へ
全15ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング