内各区の、小学校・ピオニェール分隊・児童図書館・子供の家・工場学校は、それぞれきまった日に、この「|若い観衆《トユーズ》の劇場」から無代の切符配分をうける、その予告なのである。
親たちは大人の劇場へ職業組合からの半額、あるいは無代の切符をもって。子供は子供の属す組織を通じて「|若い観衆《トユーズ》の劇場」へ! ここにソヴェト同盟の劇場の、晴れやかな歓びの源がある。
たとえ、或るものはまるきり無代でないにしろ、二十七カペイキの切符代で、こんな面白い、そしてためになる芝居が観られる。ソヴェトの子供は、仕合わせだ。――彼らの親、兄、姉が、そのためには血で「十月」を勝ちとったのだ。
(子供のための劇場は、モスクワにも二つある。)
二幕目がすむと、隣にすわっていた白い髯の教育部長が、
――どうです?
ニコニコ笑って日本女をかえりみた。
――退屈じゃないでしょう? 案外。
日本女は、古典的なマリンスキー劇場で、「眠り姫」を見るよりは遙か面白いと正直にいった。それは、世辞ではない。インドの小娘スンダーリが親たちの迷信の犠牲になって、どっかの寺へ献上されてしまう。ウペシュがそれを知って悲
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