スモーリヌイに翻る赤旗
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)学者生活保全《ツェークーブ》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)「|学者の家《ドーム・ウチョーヌイフ》」

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)ネ※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]河
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        レーニングラードへ

 夜十一時。オクチャーブリスキー停車場のプラットフォームに、レーニングラード行の列車が横づけになっている。
 麻袋。樺の木箱に繩でブリキやかん[#「やかん」に傍点]をくくりつけたもの。いろんな服装の群集は必要以上にせき込み、頸をもち上げて前の方ばっかり見ながら押し合った。
 三等車は鋼鉄だ。暗い緑色に塗ってある。プラットフォームの屋根の直ぐ下に列車の黒い屋根があり、あたりはあまり明るくないところへ、並んでるどの車もくすんだ色だから陰気に見えた。
 国立出版所に働いてるナターリアが、
 ――所書なくさないようにね、ああ、それから荷物のそばにきっと一人いる
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