現れたのは。
観客席はざわめく。
――ラグナート! ラグナート!
泣かんばかりに腰をぬかしたウペシュを照してパッと電燈がついた。骸骨も消えた。
ラグナートは今度ウペシュをカーテンの中に入れ、
――そこんところへ手を出してたまえ。
電燈が消える、ポーッと現れたのは骨ばっかりの手だ。
――イヤダヨーッ! 死ぬのはいやだよッ※[#感嘆符二つ、1−8−75]
――死にゃしないよ。ホラ!
電気がついて見ると、ウペシュははね上って大悦びした。
――やあ! 死んでないや! 死んでないや!
見物の子供たちと日本女とはラグナートと一緒にハアハア大笑いし、同時に、実はそっと一安心する。それはレントゲンだったのだ。ここではじめてレントゲンの科学的作用をまのあたり知った子供が観衆の幾割かを占めているのは明らかなことだ。
「|若い観衆《トユーズ》の劇場」は一九二一年、レーニングラード地方ソヴェト文化部管理の下に活動をはじめた。
日本女と子供たちの手にあるプログラムには「インドの子供」の役割が書いてあるだけではない。やさしい言葉で、インドの社会的事情が前書として説明してある。終りに「何をよ
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