をなぐるものがある。イギリスの役人だ。彼は小さいインドの小僧としてそのイギリス人に使われ、字を読むことも知らない。
いつも哀れなインドのプロレタリアートのために親切な医者として働いているヨーロッパ人のチャンドラナート・パープの息子、ラグナートとウペシュは友達になった。
舞台は、今チャンドラナート・パープの家だ。二人は同じぐらいの年ごろで、――つまり観衆の子供と同じ十一二歳の子供たちだが、どうだ! ラグナートが、左手の隅のカーテンの中へ一寸入ると、室じゅうが急に真暗になった。
――ああ! ラグナート! どこいった? こわいよ! 暗いとこへは悪魔が出るよ※[#感嘆符二つ、1−8−75]
――大丈夫だよ! 大丈夫だよ。僕ここさ。
だが、なにが初まろうというんだ? 観衆の少年少女はラグナートの緊張を自分の心に感じて息をころしている。
――ここを見て御覧。
ラグナートの声の方を見ていると、細長い箱みたいなところがボーッと明るくなって、人間の形が浮き出たかと思うと、
――ヒヤーッ! 助けてくれ※[#感嘆符二つ、1−8−75]
インドの子供が悲鳴をあげたのは当り前だ。骸骨だ、そこへ
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