ひどい違いだ。
 ポーランドのプロレタリアよ。しばらくガンバレ!
 いまに、メーデーはここでもほんとうの世界労働者の国際的祭日として、それがソヴェトで行われていると同じように行われる時が来るのだ。
 それにしてもデモはいつ動き出すんだろうか、わきの労働者に自分はロシア語できいてみた。
「あなた方がいつ動きだすんですか?」
「まだわからない」
 二、三人にきいてみても答えは同じだ。
 十二時頃だろうと云うものもある。わたしたちはまだ茶も飲んでいない。それなら一つそこいらで腹ごしらえをしようということになった。
 広場のはずれにこれもまた、光り輝く服装をした巡査が立っている。それに教わって、ちょっと横丁へそれたところにある喫茶店へ行った。ガラス越しに中で茶を飲んでいる人の姿はまるみえだ。それだのに、戸のとって[#「とって」に傍点]を持って開けようとしても戸はあかない。その様子を中から給仕がみつけた。そばへ寄って来て、我々の風体をよくよくみきわめてから、やっと体が入るだけ戸をあけ、内へ入れるとまた戸へ鍵をかけた。給仕は弁解した。
「なにしろ御承知のとおり今日はメーデーだもんですから……」
 
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