ゾロゾロ歩いているが、どこにも組織されたデモンストレーションの列は見当らない。広場に近づくにつれ、意外のものがめにとまった。まるで戒厳令だ。通りに面している店と云う店はことごとく表戸をしめている。板戸に錠前をかけ、あるところでは鉄扉がおろされている。
 広場の中心へ行くと、やっと、行列らしいものがあった。往来でもみかけたようなレイン・コートの一隊が広場をグルリと列で取り巻き、手に手におそろしく太いおんなじ形のステッキをついている。みんな鳥打帽だ。
 一台、二台、三台トラックがきている。上にギッシリやっぱりレイン・コートの一隊が立っている。はじめはそれが行進を待っているメーデーのデモンストレーションだと思った。
 が、すぐ変だなと気がついた。レイン・コートの一隊は右手に赤い布で腕章をつけている。墨でそこへ何かかいてある。自分はポーランド語が読めない。それでもロシア語に似た、ポリーシャ(警備隊)という字は読めた。よく見るとその前には、市街という字がある。
 そうするとこれは反動青年団だ!
 反動青年団がこんなにも大勢、こんなにも太いステッキで武装して広場を囲んでいる!
 かんじんの労働者は
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