ウン? これがスモーリヌイ? うちの父ちゃんどこにいるのさ」すると、兄らしいのが、ちょっときまり悪そうに、答えている、「父ちゃんは、ここにはいないよ」ソヴェト同盟未来の労働者なかなか承知しない。「だって、ここボリシェヴィキの家だろう? 父ちゃんボリシェヴィキだもの、いるだろう、ここに」
一たん階下に降りて帝政時代の政治犯人が、檻禁されていた牢屋の模型を見物する。
模型といっても、本物の牢屋の鉄格子、腰かけ、みんなもとの牢屋からとって来たものだ。ほんの一坪位の厚い壁の間に、ボンヤリ、ローソクの光に照らされながら髪の伸びたやつれた革命の同志が、それでも小机に向って本をよんでいる。足を見ろ、足枷だ。寝床を見ろ、木の寝床だ。帝政時代の支配者は、こういうところへ、一年や二年、尊い解放運動の犠牲者を押しこめていたばかりじゃない、十五年、二十年とつまり一生を、閉じこめた。
だが、大衆の力、革命的労働組合の偉力、正しい指導党の力は、どんな厚い壁も、重い鎖でも、押しこめて置くことは出来ない。
再び、二階へ上ってソヴェト同盟の建設を巨大な電気仕掛の模型で、示した処を見ると、万歳! がこみあげて
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