生活をよぎなくされている若い女性の文章があったのに、今度編輯局から送られて来たのにはそういうのが一つも加わっていません。どういうわけだろうかと思います。体の丈夫な者、働くもの、そういう女性だけがこの人生に存在する権利をもっていて、弱いひと、患って働けないものは、無視されなければならないという感情がどこかにかあるほど、現在の日本の世間の気流は荒々しくなっているのでしょうか。
  一、学年末断想  中村由美
 題がそれを語っているとおり、これは全く感想です。けれども、小さい子供の真の価値と学課の点数の問題にくいちがいを見て苦しむ若い女先生の心情は読む者に感銘を与えます。こういう軟かく瑞々しい感情をもっている方が、先生として報告文学の要点をのみこんで、記録をつくったらば、意味のあるものが書けそうに思われます。
  一、自己を愛する  会沢貞子
 これも感想を書いたものとなっています。そういうものとしては、若々しい女性の心の熱をよく伝えています。一人一人の若い婦人が自分を大切にして境遇とたたかい成長して行かなければ女全体としての水準のあがる時はないという考えかたも正当であると思います。「時局に
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