すべて薄弱なものはおし流されるでしょう、」と、情熱と意欲とをもって人間が働くべき事が強調されていますが、ここのところに若い女性にとって様々の微妙な現実の問題がひそんでいるのではないでしょうか。何故ならば筆者が真心をこめて「社会が余りにも女性に無頓着でありすぎた」と云っている事実は、時局の勢でおし流されるどころか、或る地方の女学校では今頃貝原益軒の「女大学」を生徒によませ始めているという逆行ぶりです。社会のそういうおくれた勢は、薄弱などころか極めて強固です。そうとしてみれば、時局におし流されない薄弱でないものは総てそれなりで女性の向上のために有意義なものとも云えないことは明らかです。それらの生きた関係も十分心が配られ判断が加えられて初めてよい情熱が女の生活を推しすすめてゆくのだと思われます。
 このほか「境遇に勝とう」「家庭生活から」「貧しき教師」「病舎に」「お勤めして感じたもの」等いずれもそれぞれの生活の条件の中から若い女性が伸び育って行こうとしている心の姿が書かれているのですが、感想をのべた文章となっています。心持の報告でもルポルタージュであっていいという気持をもたれるかもしれません
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