革命的字句、外国語をさけよ。常に事実を書け」労働者は、身元証明帖、クラブ会員証の間から、さらに一つの体温で暖い手帖をとり出し、さて尖《さき》の太い鉛筆を何度も何度も紙の上で振りながら、安全装置をほどこされぬ上靴製工場のガス中毒について書くだろう。一〇〇〇語を、いかに有効に使うべきか。三番目の書きなおしを、半地下室の彼の住居にたった一つあるテーブルの上でやっている時、ある合宿所では、コムソモーレツのミラノフが、同僚と議論をたたかわしている。彼は酒を飲まない。煙草も吸わない。ただ南方チフリス生れの青年ミラノフは花なしではやっていけない。鉢植の花を買って彼は窓に置く。室が一鉢の花で居心地よくなったのに、仲間は彼を嘲弄し、そして花をすてた。
――お前はブルジョアだよ。お嬢さま[#「お嬢さま」に傍点]だよ。商人根性《メシチャンストヴォ》!
しかし、商人根性とは何か。清純を好むのは商人根性か? エム・オルガノヴィッチはこのСССР風な偏見打破のために労働新聞へ投書する必要を認めた。
蹴球《フットボール》が好きで、ラジオ組立ての上手なコーリヤは、市立銀行の三階にある家で、新聞を読んでいた。テー
前へ
次へ
全47ページ中43ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング