路としてドニエプル河に発電所と堰堤《ダム》工事を起した。堰堤《ダム》は総延長七六六・七五メートルになるであろう。竣工すれば全СССРの産業能率はいちじるしい増進を見、一年少くとも五百万|頓《トン》の石炭を節約することが出来るであろう。これらすべての有益な出来るであろう[#「出来るであろう」に傍点]を実現する為に必要な幾つかの発電機の支払いは、СССРに於ては間接に輸出された小麦の幾袋かを意味する。小麦を蒔いて、刈って、袋につめるのは農民の仕事だ。鷹揚そうだがプーシュキンさえ見逃さなかったバルダの知慧で|俺のこと《マヨー・ジェーロ》は抜からぬ農民魂で、彼等はどのように経済関係を理解して居るか。
復活祭前までモスクワ市はバタの欠乏に困難した。ホテルのバタ切が次第に薄くなり、牛乳製品販売所の前から厳寒《モローズ》の中を一町以上も籠を下げた女子供の列が続いた。
――どうしてこんなにバタが足りないの?
――田舎の牝牛が眠っているから。
眠っているのは牝牛ではない。牝牛を飼っている農民の手であった。彼等は一キログラム二ルーブリ四十カペイキ位の公定相場で自家製バタを手放すことを欲しなかった。
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