あつめられているのである。
益々元気旺盛な行進がつづいて、うれしい思いが募るにつれ、私は、もっと音楽をと願った。もっといろいろの歌を、と心に叫んだ。来年こそ、私たちは、もっともっと素晴らしい音楽を先頭に立てて行進するだろう。紙や布もたっぷり買って種々様々の意匠をこらし、そこの職場の飾物もこしらえるだろう。そういうよろこびは、すべて、私たち日本の働く人民が、来年五月を迎えるまでの一年の間に、どれだけ自分たちの団結の力、組織の力をつよめ、日本を働いて生きるものの幸福のための社会にしたかということを照りかえして見せる鏡となるのである。
五月一日の日がくれかかるころ、うちへは、あちこちのメーデーの経験話がもちよられた。新宿駅前広場は、城北地区の解散場であったが、そちらの行進の先頭を切ったのは簡易保険局の女子職員で、この間モスクワのメーデーと写真に紹介されたとおり、奇麗な花束を一人一人が抱えて行進した。そして、新協劇団のトラックが劇場人のメーデーらしく、揃いのなりをした俳優たちを満載して来て、シュプレヒ・コールをうたい大喝采をうけた。青年共産同盟の若々しい合唱団もトラックにのって来ていて、
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