メーデーに歌う
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)雪崩《なだ》れ
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四六年六月〕
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四月の末だのに、初夏のようにむし暑い。すっかり開けはなして夜の庭に向った座敷のラジオがメーデーの歌の指導をしている。
[#ここから2字下げ]
きけ、万国の労働者
とどろきわたるメーデーの
[#ここで字下げ終わり]
ハイ、と一節ずつ区切って熱心に合唱を教えている。その歌に合わせて、本をよんだり、書きものをしたりしている三人の男たちが、折々一緒にうたっている。足袋つくろいをしながら、若い従妹も小声でそれに合わせている。
わたしは、いうにいえない思いで、胸いっぱいになりながら、そういう宵の情景の裡にいた。
日本のラジオが、五月一日のメーデーを、こうして皆の祭り日として歌の指導まではじめた。これは、ほんとうに、ほんとうに日本の歴史はじまって以来のことである。
今度の総選挙の結果は、やはり保守勢力がどんなにまだ強くのこっているかということが国際的に証明されたし、保守政党は失業と食糧
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