新協とかわりがわり歌をうたい、よろこびの日の賑わいを添えた。
 今年のメーデーには、婦人、子供の参加がきわだって多かった、と翌日の新聞に伝えられたのであった。
 これは東京の中心ばかりでなく、八王子市を、三時間余もねり歩いた行進の中にも、若い働く婦人たちが、どっさり参加していたそうである。メーデーの共同のスローガンの中には、働く婦人の要求として、同一労働同一賃銀がかかげられたし、産前・産後の有給休暇の要求も示されていた。これらの当然な要求は、働く婦人の実力でこそ、実現されるものである。
 宮城前から首相官邸前にさしかかった行進は、隊伍の中から代表を官邸へ送りこみ、秩序正しく、前進しつづけた。そして、機会もあらば、と待ちかまえていた警官を失望させたことを、新聞はいくらかからかい気味に報じている。
 官邸に入った代表は、首相に面会して、今日の日本の生活が、これほど行づまり、危機にせまっているのに、具体的な方策は一つも建てないで、政権の奪い合いをしている不誠意について詰問したのであった。
 総選挙、その後の政府のやりかた、メーデーと、私たちは短い日数のうちに、実は少なからぬことを学んだ。真の
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