、バタ、出来上ったパンなどを盗まないように注意するのが今やゴーリキイの仕事となった。
パン焼職人は、勿論、盗んだ。仕事の最初の夜に卵を十箇、三斤ばかりの麦粉とかなり大きいバタの塊とを別にして置いた。
「これは――何にするんだね?」
「これはある娘っ子につかうんだよ」親しげにそう言い、ルトーニンは鼻柱を顰めてつけ加えた。「とてもいい娘っ子だ!」
この男は、どれだけでも、どんな恰好ででもシャベルによりかかってでも眠ることが出来た。そして、眠りながら彼は眉を挙げ、彼の顔は不思議に変って、皮肉に驚いた表情をした。地べたの底に埋められている宝物の話、夢の話、それがこのパン焼の話題である。パン店の方では仕事に不馴れなデレンコフの妹マリアとその友達の、バラ色の頬をした娘とが商売している。
ゴーリキイは、朝早く、焼きあげたパンをデレンコフの店へ運び、更にいろんなパンの詰った二プードの籠をもって神学校へ走って行った。時によると、その白パン籠の下に帳面が入っていることがある。それを、ゴーリキイは或る学生の手へうまく押し込んでやらなければならぬ。時には、行った先で、学生達が本や紙片を、ゴーリキイの籠の
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