ばかりの建設を目撃すると同時に五年前彼がレーニンの考えとは一致しない見解をプロレタリアート独裁下のインテリゲンツィアに対して抱いていたのにつけ込んで、ソヴェト同盟内の富農的ブルジョア的残存分子が、いろいろの泣きごとを彼に向ってぶちかけた。「哀れなる少年の一団より[#「*」の注記]」の問題もその一つである。
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* ソヴェト同盟は当時、すべての学校に先ず労働者の子供らを入れ、農民の子供を入れ、勤め人の子を収容した。ツァー時代のブルジョア・地主の子等は学校に入れなかった。そのことについて「真理の擁護者マクシム・ゴーリキイ」に対する「哀れなる少年の一団」からの訴えの公開状が発表された。ゴーリキイは、それについて二度にわたって答えの文章を書いた。公開状の性質は明らかに反革命的な効果を期待して書かれたものであった。
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ゴーリキイが私のたった二言の返事に対し、それは本当だと云った重々しい調子から、私は文章を通じて感じていたよりもっとはっきり、彼が今非常におびただしい複雑な印象を得てそれを整理したく思っていることを感じたのである。
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