マクシム・ゴーリキイの人及び芸術
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)吝《しわ》くなった

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(例)[#「*」の注記]」
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 現代は、一つの深刻で巨大な時期である。旧いものの世界的な崩壊、新たな社会の建設。二つの力が切迫して相うち、どんな平凡な一市民の生活さえ、それを観察すれば複雑な社会的矛盾からまぬかれ得てはいないのである。動揺はいたるところに起っている。
 この時代に、世界は文学の分野において誇るに足る二人の勇士をもっている。ロマン・ローラン、マクシム・ゴーリキイの二人である。
 これらの人々は、いずれも自分の遭遇した時代の種々さまざまな矛盾をもっとも偽りない心で悩みつつ頑強に人類の幸福とより合理的な社会を求める熱誠を棄てなかった人々である。そして、永年にわたる困難な闘いを通じて、遂にその解決を見出した人々である。彼らは勤労人民こそ新しい歴史の担い手であり、知識人としての自身のあらゆる豊富な才能やまじめな思想も、プロレタリアートが自分たちの運命の主人となった社会に於てこそ初めて花咲き輝
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