た新聞の第一面に、なるほど大きくクララ・ツェトキンの写真がでている。「国際婦人デーについて」という長い論文ものっている。
『プラウダ』ばかりでなく、ソヴェト同盟でだしているすべての新聞が、今朝は婦人デー特輯なのだ。
 並木道を工場の方へ曲ると、工場の正門に赤旗がいきいきはためいている。托児所の煉瓦の建物の窓も、赤旗である。
 続々とやってくる婦人労働者たちは、みんな勇んでその門を入って行く。五ヵ年計画がはじまってから誰でも七時間労働だが、今日は特別である。婦人労働者だけは全体に一時間早く仕事をきりあげる日なのだ。

 職場では、もう仕事着に着かえたオーリャが、壁新聞の前に立って、みんなに大きな声を出して、今年の国際婦人デーがどんな意味をもっているかという小さい論文を読んでやっている。
 ニーナは、かたまりの後に立って、注意ぶかく耳をすました。
 今年の婦人デーは、ソヴェト同盟の労働婦人全体にとって、これまでとはまた違う大切な意味をもっている。それは、五ヵ年計画完成の最後の重大な年であるとともに、このソヴェト同盟のプロレタリアの勝利を憎んで、ブルジョア、地主の国はさかんに反ソヴェト戦争の
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