ソヴェト同盟の三月八日
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
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(例)三月八日[#「三月八日」はゴシック体]と大きく輝いている
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朝
モスクワ煙草工場に働いているニーナは、例によって枕元の眼醒ましの音でハッと目をさました。
いそいで服を着て、水道の冷たい水で顔を洗い、冷水摩擦をやっているうちに、ニーナはだんだんうれしい心持になってきて、思わず小声で「インターナショナル」をうたいだした。
今日は三月八日だ! 女の日だ。世界の働く婦人たちが手をつなぎ、プロレタリアート・農民の解放と、ソヴェト同盟の守りのために示威する国際婦人デーだ。
モスクワの三月といえば、まだ冬だ。ニーナは、寝室の下から長い防寒靴を出してはき、頭を暖かい毛のショールできっちりくるむと、雪の凍っている往来へでた。寒さでニーナの頬っぺたが忽ち赭くなる。息は白く見える。同じように白い息をはきはき、大勢の男や女が勤めへ向って急ぎ足で歩いている。
今朝は、いつもと違って郵電省の立派な入口に、幾条もの赤旗が飾られている。勢いよく
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