運動靴をはいている。元気なもんだ。
 われわれは、カンカン日にてらされながら、ひろいひろい、野営地じゅうを見て歩いた。五百人のピオニェールが走っているんだそうだが、どこにいるのか、丘や林や池のあっちこっちにちらばって、一向めだたない。
 景色はなんとも云えずいい。花の咲いてる道をダラダラのぼってゆくと、樹にかこまれた大きい池がある。大よろこびで、ピオニェールたちは水浴びの最中だ。
 植物採集をやっているらしく、しきりに茂った草の中を、なにかさがしながら歩いているピオニェールの姿も見える。
 指導者のアンナさんは、われわれとならんで草の中へねころび、満足そうにそういうピオニェールの夏休みの景色を眺めていたが、急に、
「ああ、あなた。この池をさかいにして、私どもんところじゃ、大戦さがあったんですよ」
と云った。
「大戦さ? いつです?」
「ついこの間!」
 そう云って、アンナさんは笑った。
「知っているでしょう。一九二九年の夏はソヴェト同盟で、世界の第一回ピオニェール大会がありました。今年一九三〇年の夏は、ドイツのハーレという市で、第二回の世界ピオニェール大会がひらかれる筈だったんです。と
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